遺 遺伝 伝物 物質 質D DN NA A
講師:埼玉県立所沢高等学校教諭�森田 保久 高高校校講講座座HHOOMMEE >> 生生物物 >> 第21回 遺伝物質DNA第21回 第3部�遺伝
今回は、遺伝物質DNAと題しまして、生命の設計図ともいえるDNAがどのような物質なのか。またDNAに、遺伝子と してはたらくための、どのようなしくみが隠されているのか。その点について学習します。
遺遺伝伝物物質質DDNNAA 今今日日のの学学習習
みなさんこんにちは、講師の森田保久です。
前回までは、親から子ども遺伝していくしくみについて勉強してきました。今日は、まず1番目にDNAとは一体どのよ うな物質なのか、またどのようなしくみで遺伝子としてはたらくのか、ということについて学習します。2番目は、「遺 伝子はDNA」であるということがどのようにしてわかってきたのか。その研究の過程をお話ししたいと思います。
ペペーージジトトッッププへへ戻戻るる ニニワワトトリリののDDNNAAをを取取りり出出すす
まずDNAという物質を見てみましょう。これはニワトリのレバーから取り出したDNAです。これは、家庭にある道具や 材料、それと薬局で売っている薬品を使って取り出すことができます。
【主な材料】
新鮮なとりのレバー。濃度95%以上のエタノール。濃度12%の食塩水。
【実験方法】
・まず鍋でお湯を沸かします。
�*エタノールは引火性ですので、火から遠ざけてください。
・次に、とりのレバー1羽分と水200mlをミキサーにかけます。
・これを50mlほど耐熱容器に移し、同じ量の食塩水を加えます。
・時間をおかずにふっとうしたお湯に入れて温め、静かにかき混ぜます。
・レバーの赤みが消えたら、火を消します。
�*次にエタノールを使いますので、必ず火を消してください。
・4枚重ねのガーゼでこします。
・ろ液を氷で冷やします。
・ろ液が充分に冷えたら、冷やしたエタノールを加えます。
・コップの壁を伝わらせて静かに注ぎます。量は元の液の2~3倍です。
・白いモヤモヤしたものが出てきました。エタノールに溶けないDNAです。
・しかしこの状態では、まだ不純物が多く含まれています。
・不純物を取り除いて、純度の高いDNAを取り出しましょう。
・容器に入ったエタノールを捨てます。
・もう一度、食塩水で溶かします。量は、20~30mlほどです。
・お湯で温めます。時間は3分ぐらいです。
・熱いうちに、コーヒーのろ紙でこします。ろ液を氷で冷やしながら行います。
・ろ液に冷たいエタノールを静かに注ぎます。量はろ液の2~3倍です。
・またDNAが出てきました。これがニワトリのレバーから取り出したDNAです。
ペペーージジトトッッププへへ戻戻るる DDNNAAのの名名前前とと研研究究のの歴歴史史
DNAの正式名称は、デオキシリボ核酸。英語ではDeoxyribo Nucleic Acid といいます。頭文字をとってDNAと略 されます。物質としてのDNAは、1869年にミーシャが発見しました。同じころメンデルが「遺伝子」という考え方を提 唱していますが、遺伝子がDNAだということは、その当時はわかっていませんでした。その後1944年に「遺伝子は DNAだ」ということをエイブリーが発見しました。そして1953年にワトソンとクリックという若い研究者によって、DNA の立体構造が明らかになりました。立体構造というのは、立体的な形のことです。この立体的な形に、DNAという分 子が遺伝子になれる秘密があるのです。その秘密は2つあります。それをこれから見ていきましょう。
ペペーージジトトッッププへへ戻戻るる DDNNAAのの秘秘密密((11))��ヌヌククレレオオチチドドのの並並びび方方
これは、DNAの立体構造を表した模型です。DNAは、細長い鎖のようにつながっていて、2本の鎖がらせん状になっ ています。これを二重らせん構造といいます。
続きは平面的な模型で説明します。DNAは2本の鎖からできていますが、条件によっては2本の鎖に分かれることが
できます。1本の鎖は、4種類のヌクレオチドという部品からできています。アデニン(A)を持つもの、チミン(T)を持 つもの、グアニン(G)を持つもの、シトシン(C)を持つもの、この4種類です。
ヌクレオチドが結合して1本の鎖になるのですが、4種類のヌクレオチドの並び方に制限はありません。アデニンの隣 にグアニンが来ても良いし、アデニン・アデニンと2つならんでもOKです。どのような順番にも並ぶことができます。
このように、ヌクレオチドがどのような順にでも並ぶことができること。これがDNAが遺伝子になれる第1の秘密で す。どんな順番でも並ぶことができるので、ATGCの並び方に意味を持たせることができます。つまり遺伝情報を ATGCの並び方として書き込むことができるというわけです。
ペペーージジトトッッププへへ戻戻るる DDNNAAにに書書かかれれたた血血液液型型のの情情報報
私たちが使う言葉も、文字の並ぶ順番にその意味があります。ここに書いてあるのは、カタカナの文字です。「血液 型はA型」と「血液型はB型」という意味です。違いはカタカナ1文字だけですが、その意味は大きく変わります。
こちらは、DNAのATGCの並ぶ順番で血液型を表しています。1000文字ほどのATGCで血液型がA型であること を表している遺伝情報です。
これは、血液型がB型のATGCの配列です。違いは、7か所だけです。日本語でも1文字違えば異なる意味になる場 合があるように、DNAでも1文字違えば別の意味になることがあります。この様にDNAのヌクレオチドの並ぶ順番 が、生物の遺伝情報になっているのです。
ペペーージジトトッッププへへ戻戻るる DDNNAAのの秘秘密密((22))��複複製製ののししくくみみ
DNAが遺伝子になることができる秘密は、もう1つあります。
DNAにはATGCの並びによって生物の遺伝情報が書き込まれていましたが、これだけでは遺伝子にはなれません。
遺伝子は、親から子どもに伝わらなくてはなりません。ですから遺伝子には、全く同じものをコピーできるしくみが必 要です。DNAの形には、全く同じものがコピーできるしくみがあります。それが2番目の秘密です。
1本の鎖の中で4種類のヌクレオチドがつながる順番は自由だといいましたが、ヌクレオチドの対の結合には、制限 があります。この塩基の部分の形がそれぞれ違うために、お互いに結合できるヌクレオチドは1つしかないのです。ア デニンにはチミンしか結合することはできません。チミンには、アデニン。そしてグアニンにはシトシン、シトシンには グアニンしか結合できません。つまり、アデニンとチミンのペア(A-T)、グアニンとシトシンのペア(G-C)しかありませ ん。
このルールに従って、1本のDNAの鎖に新しいヌクレオチドを結合させていくと、元のDNAと同じDNAに戻ることが できます。つまり、全く同じDNAが2本できます。このようにしてDNAは遺伝情報が全く同じものを次々と増やして、
子どもに伝えていくのです。
ペペーージジトトッッププへへ戻戻るる
「「遺遺伝伝子子ははDDNNAA」」��どどののよよううににししててわわかかっったたののかか
「遺伝子の正体は、DNAだ」というのは、いつ、どのようにしてわかったのでしょうか。
メンデルは「遺伝子」という考え方を提唱しました。同じころミーシャーがDNAという物質を発見しました。しかし、メ ンデルは遺伝子がどんな物質なのかわかりませんでしたし、ミーシャーもDNAがどんな働きをするのかはわかりま せんでした。遺伝子の正体がDNAであるということを発見したはエイブリーですが、その前にグリフィスの実験から 話を始めましょう。
ペペーージジトトッッププへへ戻戻るる ググリリフフィィススのの実実験験��((肺肺炎炎双双球球菌菌のの形形質質転転換換))
20世紀の初めころ、死因の上位を占めていたのが肺炎という病気です。肺炎の病原菌である肺炎双球菌には、膜 を持つS型と持たないR型があります。S型には病原性があり、R型には病原性はありません。ですからネズミにS型菌 を注射すると肺炎を起こしますが、R型菌を注射してもネズミは健康なままです。次に加熱殺菌したS型菌を注射し ます。殺菌したのですから、ネズミは肺炎にはなりません。
では、加熱殺菌したS型菌と生きているR型菌を混ぜてネズミに注射すると、どうなるでしょうか。加熱殺菌したS型 菌と病原性のないR型菌ですから肺炎にはならないと考えるのが普通です。ところが、このネズミは肺炎になってし まいました。そして、ネズミの体内ではS型菌が増殖していることが確かめられたのです。
この予想外の結果に対して、「死んだS型菌の影響でR型菌がS型菌に変化したのだ」と考えられました。これは、生 物の特徴が変化するわけですから、形質転換と呼ばれました。この実験では、R型菌がS型菌に形質転換し、子ども に受け継がれたのです。つまりこの形質転換は、殺菌されたS型菌の遺伝子がR型菌に入り込んで起きるのだと考 えられたのです。
ペペーージジトトッッププへへ戻戻るる エエイイブブリリーーのの実実験験
この形質転換の話を聞いたエイブリーは、S型菌の中にあるどの物質が遺伝子であるかを確かめようとしました。S 型菌の抽出物の中には、炭水化物、タンパク質、DNAなどがあります。
まず、S型菌の炭水化物を酵素で分解してR型菌に与えてみたところ、形質転換が起こりました。炭水化物を無くし てしまったのに形質転換が起こったいうことは、炭水化物は遺伝子ではないということです。同じようにして、タンパ ク質をも遺伝子でないことがわかりました。ところがDNAを酵素で分解してR型菌に与えると、形質転換が起こりま せんでした。つまりDNAを分解すると、形質転換を起こす遺伝子が無くなってしまったということです。こうしてDNA が遺伝子であるということがわかりました。エイブリーは形質転換という現象を利用して遺伝子がDNAという物質だ ということをつきとめたのです。
今の形質転換の話を聞いて、ニワトリのDNAを食べたら、ニワトリに特徴を持つようになるのではないかと不安になっ た方がいるかも知れませんが、形質転換は細菌だけに起きる現象です。他の生物では起こりません。ですから人が ニワトリを食べてそのDNAを体内に取り込んでも、ニワトリの特徴を持つようになることはありませんので安心してく ださい。
ペペーージジトトッッププへへ戻戻るる 今今日日ののままととめめ
今日は、DNAがATGCを持つ4種類のヌクレオチドでできていること。
そのヌクレオチドの並び方、立体構造に、遺伝子としてはたらくしくみがあること。
また、遺伝子はDNAであることがエイブリーによって解明されたことを学習しました。
エイブリーが遺伝子はDNAだと発見したことが、ワトソンとクリックに影響を与え、DNAの立体構造の解明につなが り、その後の生物学に大きな進歩をもたらしたのです。
次回は、DNAのヌクレオチドの並びによって、どのようにしてからだの特徴が決まるのか。そのしくみについて学習し ます。